第1章. テクニカル分析入門 — チャートで市場を読む法とダウ理論
第1章 概要:チャートは何を語るのか
同じ銘柄を前に、ある人は「今が買い時」と言い、ある人は「まもなく下がる」と言う。二人とも同じチャートを見ている。違いは、チャートを読む文法を知っているかどうかだ。
企業の業績や財務を分析するのがファンダメンタル分析なら、価格と出来高の動きそのものから売買判断を導くのがテクニカル分析である。
この講義の目標:テクニカル分析の3つの前提を理解し、すべてのチャート分析の根であるダウ理論と「トレンド」の概念をつかむ。
1. テクニカル分析の3大前提
テクニカル分析は次の3つの仮定の上に立つ。
| 前提 | 意味 |
|---|---|
| 市場はすべてを織り込む | 業績・金利・心理など、あらゆる情報がすでに価格に含まれている |
| 価格はトレンドを描いて動く | 一度形成された方向性は慣性をもって続く |
| 歴史は繰り返す | 投資家心理が似たように働き、パターンが再現する |
つまり「なぜ上がるのか」より、**「今どんな流れの中にあるか」**に集中する。材料の解釈ではなく、その結果として現れた価格の動きを見る。
2. ファンダメンタル分析 vs テクニカル分析
| 区分 | ファンダメンタル | テクニカル |
|---|---|---|
| 分析対象 | 業績・財務・産業 | 価格・出来高・チャート |
| 核心の問い | 「何を買うか」 | 「いつ売買するか」 |
| 時間軸 | 中長期 | 短〜中期 |
| 限界 | タイミングに弱い | ファンダ無視のリスク |
両者は競合ではなく補完関係だ。 良い企業を選ぶこと(ファンダ)と、良い時点で入ること(テクニカル)は、組み合わせてこそ最も強力になる。
3. ダウ理論 — すべてのチャート分析の根
チャールズ・ダウが19世紀末に確立したダウ理論は、現代テクニカル分析の出発点だ。核心は市場は3つのトレンドが重なって動くということ。
- 主要トレンド:1年以上続く大きな方向(強気相場/弱気相場)
- 中期トレンド:主要トレンドに逆らう数週〜数か月の調整
- 小トレンド:数日の小波、ノイズに近い
ダウ理論の6原則(要約)
- 平均はすべてを織り込む
- 市場は3つのトレンドをもつ
- 主要トレンドは3局面(蓄積→大衆参加→分配)を経る
- 平均は互いに確認し合わなければならない
- 出来高はトレンドを確認する
- トレンドは明確な転換シグナルが出るまで続く
6番が核心だ — **「トレンドは友(The trend is your friend)」**という格言はここから来る。
4. トレンドの3つの方向
トレンドは結局、高値と安値がどうつながるかで定義される。
| トレンド | 高値/安値パターン | 対応 |
|---|---|---|
| 上昇トレンド | 高値・安値が切り上がる(HH・HL) | 押し目買い |
| 下降トレンド | 高値・安値が切り下がる(LH・LL) | 戻り売り |
| 横ばい(レンジ) | 高値・安値が一定範囲 | 下限買い・上限売り |
上昇トレンド: /\ /\
/ \/ \/ ← 安値(HL)が切り上がる
/
上昇トレンドが崩れた最も単純なシグナルは、直前の安値(HL)を割ることだ。これ一つで損切りの基準が明確になる。
5. テクニカル分析に向き合う正しい姿勢
テクニカル分析は未来を当てる占いではなく、確率を管理する道具だ。どんな指標も100%当たらない。シグナルが外れたとき損失を抑える**損切り(リスク管理)**が、チャートを読むことより重要だ。
- 一つの指標を盲信せず、複数シグナルの組み合わせで判断する
- 入る前に手仕舞い(損切り・利確)計画を立てる
- 自分の売買時間軸(スイング・デイ・長期)に合う指標だけを見る
今回のまとめ
- テクニカル分析は「市場はすべてを織り込み、価格はトレンドを描く」を前提とする。
- ファンダ(何を)とテクニカル(いつ)は補完関係。
- ダウ理論の核心はトレンドは転換シグナルまで続くこと。
- トレンドは高値・安値の流れで定義され、直前安値割れが最も単純な転換シグナル。
- チャートは水晶玉ではなく、確率・リスク管理の道具。
次回:チャートの最小単位であるローソク足を解剖する。陽線・陰線の意味から、売買に直結するハンマー・十字線・包み足などのパターンまで読む。
OIYO編集部
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