行動経済学 — プロスペクト理論①:参照点と損失回避
行動経済学 — 人は富の水準ではなく変化に反応する
期待効用理論では、効用は最終的な富の関数である。1億ウォンを持つ人が100万ウォンを得ることと、1億200万ウォンを持っていて100万ウォンを失うことは、どちらも最終的な富が1億100万ウォンなので同じである。カーネマンとトベルスキーのプロスペクト理論はこの仮定を捨てる。人々は参照点を基準に結果を利得と損失に分けて評価し、損失を同じ大きさの利得よりずっと大きく感じる。
1. 価値関数の三つの性質
- 参照点依存性:価値は変化について定義される。参照点は通常は現状だが、期待や目標のこともある。
- 損失回避:なので、損失の曲線は利得の曲線より急である。原点で折れ曲がる。
- 感応度逓減:なので、利得の領域では凹、損失の領域では凸である。0ウォンから10万ウォンに増えるのは大きく、100万ウォンから110万ウォンに増えるのは小さく感じる。
同じ50の変化が、利得なら約31、損失なら約−70の価値をもたらす。原点で傾きが折れ曲がるのが損失回避である。
2. 損失回避の大きさ
コインを投げて表ならウォンを得て、裏なら10万ウォンを失う賭けを考えよう。期待値が0より大きければ( > 10万ウォン)、リスク中立的な人は受け入れる。実際には、ほとんどの人はが20万ウォン近くにならないと受け入れない。価値関数が線形に近ければ、この賭けを受け入れる条件は(万ウォン単位)、すなわち万ウォンである。多くの実験やフィールド研究で推定されたがおおむね2前後である理由である。
期待効用理論でこの行動を説明しようとすると、小さな賭け金に対しても極端なリスク回避が必要になる。ラビンは、小さな賭けを断る程度の凹性をもつ効用関数なら、大きな賭け金では誰も受け入れないようなばかげた選択をしなければならないことを示した。小さな賭け金でのリスク回避は、富の曲率より参照点での折れ曲がりで説明するほうが自然である。
3. 反転効果:利得では安全を、損失では賭けを
| 問題 | 選択肢A | 選択肢B | 多数の選択 |
|---|---|---|---|
| 利得 | 確実に3,000を得る | 80%の確率で4,000を得る | A(80%) |
| 損失 | 確実に3,000を失う | 80%の確率で4,000を失う | B(92%) |
Bの期待値は3,200でAより大きい。利得の問題では期待値の低い確実な方を、損失の問題では期待値のより悪い賭けを選んだ。利得の領域の凹性と損失の領域の凸性がそのまま表れている。この非対称性を反転効果(鏡映効果)という。
現実の例は、含み損のある株を売らずに持ち続ける行動である。すでに損失の領域にいれば、確実な損失の確定より、回復の可能性のある賭けのほうが魅力的である。第8章の気質効果につながる。
4. フレーミング:参照点を変えれば選択が変わる
参照点が記述のしかたによって変わるなら、結果が同じでも表現だけで選択が変わる。トベルスキーとカーネマン(1981)の「アジアの病気」問題で、600人が危険にさらされているとき、
- 「200人が助かる」vs「3分の1の確率で600人が助かる」→ 72%が確実な方
- 「400人が死ぬ」vs「3分の2の確率で600人が死ぬ」→ 78%が賭けの方
二組の選択肢は、結果がまったく同じである。最初の表現は「全員が死ぬ」を参照点として結果を利得にし、二つ目の表現は「誰も死なない」を参照点として損失にする。標準モデルの記述の不変性(同じ問題はどう表現しても同じ選択になる)という仮定が崩れる。
5. 狭いフレーミング
人々は、複数の決定をまとめて評価するのではなく、一つずつ別々に評価する傾向がある。先の50:50の賭け(利得15万ウォン、損失10万ウォン)を一度だけ行うなら、の人は断る。同じ賭けを100回行う束として見れば、損失の確率はごく小さく、期待利得は250万ウォンである。束で見れば受け入れる賭けを、一つずつ見るために断るのである。第8章の株式プレミアム・パズルの説明(近視眼的損失回避)がこの論理である。
確認問題
で価値関数が線形なら、「60%の確率で10万ウォンを得て、40%の確率でXウォンを失う」賭けを受け入れる最大のXは。(万ウォン単位)から、万ウォンである。リスク中立的な人なら15万ウォンまで受け入れる。損失回避が、受け入れ可能な損失の大きさを半分にした。
参考資料
- Daniel Kahneman and Amos Tversky, “Prospect Theory: An Analysis of Decision under Risk,” Econometrica (1979)
- Amos Tversky and Daniel Kahneman, “The Framing of Decisions and the Psychology of Choice,” Science (1981)
- Amos Tversky and Daniel Kahneman, “Advances in Prospect Theory: Cumulative Representation of Uncertainty,” Journal of Risk and Uncertainty (1992)
- Matthew Rabin, “Risk Aversion and Expected-Utility Theory: A Calibration Theorem,” Econometrica (2000)
OIYO編集部
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