行動経済学 — プロスペクト理論②:確率加重と保有効果
行動経済学 — 確率はそのままは使われず、持っているものは高くなる
第2章の価値関数は、結果をどう評価するかを扱った。プロスペクト理論の二つ目の要素は、確率をどう使うかである。期待効用理論では、結果は確率に比例して重みづけられる。プロスペクト理論では、確率は決定の重みに変換されてから使われ、その変換は線形ではない。
1. アレのパラドックスと確実性効果
| 問題 | 選択肢A | 選択肢B | よくある選択 |
|---|---|---|---|
| 1 | 確実に1億ウォン | 10%で5億、89%で1億、1%で0ウォン | A |
| 2 | 11%で1億ウォン、89%で0ウォン | 10%で5億ウォン、90%で0ウォン | B |
二つの問題は、「89%の確率で1億ウォン」という共通の結果を除けば同じ選択である。期待効用理論は共通の結果を無視するので、問題1でAを選んだ人は問題2でもAに当たる11%を選ばなければならない(独立性の公理)。実際には多くの人が、1ではA、2ではBを選ぶ。確率が100%から99%に下がることは、11%から10%に下がることよりずっと大きく感じられるからである。これが確実性効果である。
2. 確率加重関数
を入れると、1%の確率は約5.5%に、99%は約91%に重みづけられる。50%は約42%である。小さな確率は過大に、中程度以上の確率は過小に重みづけられる。この逆S字の形が、確実性効果と宝くじの購入を同時に説明する。
対角線より上(小さな確率)は過大な加重、下(中程度以上の確率)は過小な加重である。二つの曲線は約30〜40%付近で交わる。
3. リスク態度の4パターン
価値関数の形(利得ではリスク回避、損失ではリスク追求)と確率加重を合わせると、四つのパターンが出てくる。
| 利得 | 損失 | |
|---|---|---|
| 高い確率 | リスク回避 — 和解金を受け取り訴訟を断念 | リスク追求 — 損失を確定せずに持ちこたえる |
| 低い確率 | リスク追求 — 宝くじの購入 | リスク回避 — 保険への加入 |
低い確率の利得でリスク追求が現れるのは、小さな確率の過大な加重が価値関数の凹性を圧倒するからである。1%の確率で100万ウォンがもらえる宝くじの期待値は1万ウォンだが、決定の重み5.5%を当てはめると、主観的な価値が確実な1万ウォンより大きくなりうる。同じ論理で、1%の確率で100万ウォンを失うのを避ける保険に、期待損失1万ウォンより多い保険料を払う。
4. 保有効果:持っているものは高くなる
カーネマン、ネッチ、セイラー(1990)は、実験参加者の半分にマグカップを配り、売買させた。マグカップは無作為に割り当てられたので、選好が同じならおよそ半分が取引されるはずである。実際の取引量はそれよりずっと少なく、売り手が求めた価格の中央値は、買い手が払ってもよいとする価格の約2倍以上だった。
第2章の損失回避で説明すれば、所有者にとってマグカップを売ることは損失であり、非所有者にとって買うことは利得である。損失のほうが大きく感じられるので、受取意思額(WTA)が支払意思額(WTP)より高くなる。
保有効果は、コースの定理(財政学第1章)の予測を弱める。権利を誰に与えるかによってWTAとWTPのどちらが基準になるかが決まるので、取引費用がなくても初期配分が最終配分に影響しうる。
5. 現状維持バイアス
代替案が複数あるとき、現状を維持する選択肢が過度に選ばれる。サミュエルソンとゼックハウザー(1988)は、同じ選択肢を提示しつつ、その一つを「現状」と表示すると、その選択肢の選択率が上がることを示した。現状から離れるあらゆる変化は利得と損失をともに含み、損失のほうが大きく感じられるなら、変化しない方が有利に見える。切り替え費用や決定回避も同じ方向に働く。第9章のデフォルトの設計はこのバイアスを利用している。
確認問題
w(0.01)=0.055、利得の領域の価値関数がのとき、「1%の確率で100万ウォン」と「確実な2万ウォン」のどちらを選ぶか。宝くじの価値は(万ウォン単位)、確実な2万ウォンの価値はである。期待値1万ウォンの宝くじを確実な2万ウォンより好む。確率をそのまま使えば()、宝くじの価値は0.58となり逆転する。
参考資料
- Maurice Allais, “Le comportement de l’homme rationnel devant le risque,” Econometrica (1953)
- Daniel Kahneman, Jack Knetsch and Richard Thaler, “Experimental Tests of the Endowment Effect and the Coase Theorem,” Journal of Political Economy (1990)
- William Samuelson and Richard Zeckhauser, “Status Quo Bias in Decision Making,” Journal of Risk and Uncertainty (1988)
- Charles Plott and Kathryn Zeiler, “The Willingness to Pay–Willingness to Accept Gap,” American Economic Review (2005)
OIYO編集部
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