国際貿易論 — 関税・輸入割当・補助金の厚生と政治経済
国際貿易論 — 貿易政策の厚生を、誰の利益なのかに分けて見る
関税が国内産業を保護するというのは正しいが、分析の終わりではない。消費者の損失、生産者の利益、政府収入、死荷重を分け、輸入国が世界価格に影響を与えられるかどうかも確かめなければならない。
1. 小国の関税は世界価格を変えられない
世界価格が10で、単位あたりの関税が2なら、国内価格は12に上がる。価格の上昇で国内生産は増え、消費は減るので、輸入量は減少する。
需要を、供給をとする。自由貿易では消費80、生産20、輸入60である。関税の後は消費76、生産22、輸入54になる。
2. 大国には交易条件効果があるが、報復を抜いてはならない
輸入需要が世界価格に影響するほど大きい国なら、関税で外国の輸出価格を下げ、交易条件の利益を得られる。最適関税の論理は、この利益と国内の歪みを比べる。しかしこれは、相手国の報復、サプライチェーンの再編、協定違反の費用を除いた一方的なモデルである。
3. 同じ輸入量の制限でも、関税と割当ではレントの帰属が異なる
| 項目 | 関税 | 割当 |
|---|---|---|
| 統制 | 価格のくさび | 数量の上限 |
| 価格の変化 | 世界価格+関税 | 輸入権をめぐる競争で上昇 |
| 輸入レント | 政府の関税収入 | 許可の保有者または外国の輸出者 |
| 需要の増加 | 輸入量が増えうる | 数量が固定なら価格がさらに上がる |
割当のレントを競売にかければ政府が回収できるが、無償で配分すれば特恵とロビー活動の対象になる。輸出自主規制では、レントが外国の輸出者に渡ることがある。
4. 名目関税より実効保護率が大きいことがある
完成品の価格が100、輸入中間財が60なら、国内の付加価値は40である。完成品に20%の関税をかけ、中間財には関税がなければ、保護後の付加価値は60になる。
5. 保護の論拠は、市場の失敗の原因と手段を結びつけなければならない
幼稚産業、学習の外部性、国家安全保障、戦略産業はありうる論拠である。しかし外部性が国内生産にあるなら、消費まで歪める関税より生産補助金のほうが直接的でありうる。政府に将来の勝者を見分ける情報があるのか、支援がいつ終わるのか、ロビー活動と報復のリスクも評価しなければならない。
次の章では、単位労働投入量から比較優位を数理的に判別し、交易条件と賃金の範囲を計算する。
確認問題
第1節の需要・供給で関税2がかかるとき、消費者余剰の減少、生産者余剰の増加、関税収入をそれぞれ求め、死荷重6と合うか確かめる。消費者余剰の減少は、生産者余剰の増加は、関税収入はである。で、公式の結果と一致する。消費者の損失の大部分は生産者と政府に移転され、消えるのは6だけである。
参考資料
- World Trade Organization, Tariff and trade data
- WTO, World Trade Report
- Paul Krugman, Maurice Obstfeld and Marc Melitz, International Economics
Oiyo
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