マクロ経済学 — 成長モデルの比較
マクロ経済学 — 成長論争は、貯蓄が水準を変えるのか成長率を変えるのかの問題である
第11章のソローモデルと第12章の内生的成長モデルを並べて比較する。「なぜある国は速く追いつき、ある国はそうでないのか」という問いに各モデルが何を予測するか、データがどちらを支持するかを整理する。
1. モデル別の予測
| モデル | 貯蓄率の上昇 | 長期の1人当たり成長の源泉 | 収束 |
|---|---|---|---|
| ソロー | 定常状態の水準だけを高める | 外生的な技術進歩 | 条件付き収束 |
| 人的資本を加えたソロー | 水準をより大きく高め、移行期が長い | 外生的な技術進歩 | 条件付き収束(遅い) |
| AK | 成長率を恒久的に高める | 広い資本の蓄積 | 収束しない |
| アイデアに基づくモデル(ローマー) | 研究人員と誘因が成長率を決める | 研究開発 | 技術の普及しだい |
2. 収束の速度
マンキュー、ローマー、ワイル(1992)は、ソローモデルに人的資本を加えると国家間の所得差のかなりの部分を説明でき、貯蓄率と人口増加率をコントロールした条件付き収束の速度は年2%程度だと推定した。年2%で収束するなら、定常状態までの格差が半分になるのに約35年かかる。
3. 開発会計:所得の差はどこから来るのか
豊かな国と貧しい国の1人当たり産出の差を資本、人的資本、生産性(TFP)に分けると、要素投入の差だけでは説明できない大きな部分がTFPの差として残る(ホールとジョーンズ1999など)。貧しい国が貧しい主な理由は、資本が少ないからというより、同じ資本と労働でより少なく生産するからだという意味である。その生産性の差の根本原因として、制度、地理、文化が議論されている。
4. 東アジアの成長論争
1960〜1990年代の東アジアの高成長は、二つの解釈を生んだ。
- 蓄積説:ヤング、クルーグマンらは、成長の大部分が高い投資率、労働参加の拡大、教育の拡大から生じ、TFPの上昇は大きくなかったとみた。ソローモデルに従えば、蓄積だけによる成長はいずれ鈍化する。
- 同化説:他の研究者は、先進技術を速く吸収・学習する過程そのものが投資と結びついているので、蓄積と技術進歩を分けるのは難しいとみた。
どちらの解釈も、移行期には速いキャッチアップが可能だが、先頭に近づくほど成長率が技術進歩率に収束するという点では一致する。先進国の近くでは、模倣ではなく革新が成長の源泉になる。
5. 政策判断の基準
| 政策 | ソローの評価 | 内生的成長の評価 |
|---|---|---|
| 貯蓄の奨励 | 水準の向上、移行期の消費の犠牲 | 成長率の向上もありうる |
| 研究開発補助 | 技術が外生なので説明の外 | 過少供給の是正で成長率が向上 |
| 教育投資 | 人的資本を通じて水準が向上 | アイデアを生む能力が向上 |
| 財産権・制度の改善 | 投資誘因を通じて水準が向上 | 革新の誘因を通じて成長率が向上 |
確認問題
二国の定常状態の所得格差が40%で、収束の速度が年3%なら、格差が20%に縮まるのに何年かかるか。半減期は年である。同じ格差がAKモデルのもとで貯蓄率の差から生じたものなら、格差は縮まらずに広がる。データで条件付き収束が観察されるかどうかが、二つのモデルを分ける試験である。
参考資料
- N. Gregory Mankiw, David Romer and David Weil, “A Contribution to the Empirics of Economic Growth,” Quarterly Journal of Economics (1992)
- Robert Hall and Charles Jones, “Why Do Some Countries Produce So Much More Output per Worker than Others?,” Quarterly Journal of Economics (1999)
- Alwyn Young, “The Tyranny of Numbers,” Quarterly Journal of Economics (1995)
- Paul Romer, “Endogenous Technological Change,” Journal of Political Economy (1990)
Oiyo
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