経済学•第23章•約2分•最終更新 2026年9月24日

マクロ経済学 — IS-LMの連立と比較静学

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Oiyo寄稿者
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マクロ経済学 — 2本の矢印は連立解の代わりにはならない

第4章と第7章では曲線を動かして符号と大きさを見た。この章では同じモデルを連立方程式として解き、均衡と比較静学の係数を一般式で書く。「どれだけ」に答え、政策シミュレーションの数字がどこから来るのかを確かめるには、この式が必要である。

1. 連立方程式で書く

ISとLMを次のように書く。

IS: Y=α−βr+γG,LM: MP=λY−μr\text{IS: } Y=\alpha-\beta r+\gamma G,\qquad \text{LM: } \frac{M}{P}=\lambda Y-\mu r

β\betaは金利に対する支出の反応(乗数を含む)、γ\gammaは政府支出乗数、λ\lambdaは貨幣需要の所得感応度、μ\muは金利感応度である。内生変数YY、rrを左辺に集めると

行列の形
(1βλ−μ)(Yr)=(α+γGM/P)\begin{pmatrix} 1 & \beta \\ \lambda & -\mu \end{pmatrix}\begin{pmatrix} Y \\ r \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \alpha+\gamma G \\ M/P \end{pmatrix}
係数行列の行列式は−(μ + βλ)で0ではないので、解がただ一つある。行列で連立方程式を解く方法は経済数学第5章で扱う。

クラメルの公式で解くと

均衡産出と金利
Y∗=μ(α+γG)+β M/Pμ+βλ,r∗=λ(α+γG)−M/Pμ+βλY^*=\frac{\mu(\alpha+\gamma G)+\beta\,M/P}{\mu+\beta\lambda},\qquad r^*=\frac{\lambda(\alpha+\gamma G)-M/P}{\mu+\beta\lambda}
分母μ + βλが二つの市場の相互作用である。分子は、財市場と貨幣市場の外生変数がそれぞれどのように混ざるかを示す。

2. 前の章の数値で検算

第4章の経済はα=260\alpha=260、β=10\beta=10、γ=5\gamma=5、G=30G=30、λ=0.5\lambda=0.5、μ=20\mu=20、M/P=180M/P=180である。

  • Y∗=20×410+10×18020+5=10,00025=400Y^*=\dfrac{20\times 410+10\times 180}{20+5}=\dfrac{10{,}000}{25}=400
  • r∗=0.5×410−18025=2525=1%r^*=\dfrac{0.5\times 410-180}{25}=\dfrac{25}{25}=1\%

第4章のグラフによる解と同じである。

3. 比較静学の係数

均衡式を外生変数で微分すると、政策効果が出てくる。

比較静学の係数とこの経済での値
係数一般式値第4章の結果との照合
dY/dGμγ/(μ+βλ)4G +10 → Y +40
dr/dGλγ/(μ+βλ)0.1G +10 → r +1%ポイント
dY/d(M/P)β/(μ+βλ)0.4M/P +20 → Y +8
dr/d(M/P)−1/(μ+βλ)−0.04M/P +20 → r −0.8%ポイント

1行目のμγ/(μ+βλ)\mu\gamma/(\mu+\beta\lambda)は、第7章のγ/(1+βλ/μ)\gamma/(1+\beta\lambda/\mu)と同じ式である。係数の表を見ると、各パラメータが話の筋にどう対応するかがわかる。

パラメータが大きくなると
パラメータ財政の効果金融の効果理由
γ(乗数)大きくなる—同じ支出がより大きな需要を生む
β(支出の金利感応度)小さくなる大きくなる金利の変化が支出を大きく変える(クラウディング・アウト↑、金融の経路↑)
λ(貨幣需要の所得感応度)小さくなる小さくなる産出が増えると金利がより上がる
μ(貨幣需要の金利感応度)大きくなる小さくなるLMが平らになる

4. 金利の下限が線形解を崩す

実質残高を220まで大きく増やすと、線形解はY∗=(20×410+10×220)/25=416Y^*=(20\times 410+10\times 220)/25=416、r∗=(205−220)/25=−0.6%r^*=(205-220)/25=-0.6\%である。しかし名目金利はゼロを大きく下回ることはできない。実際の均衡は、金利0でISが決めるY=410Y=410であり、金利0・産出410で必要な実質残高は0.5×410=2050.5\times 410=205なので、205を超えて増やした部分は産出を動かせない。金利が0に達した瞬間にLMは事実上水平になり、第7章の流動性の罠の領域に入る。

金利の下限と金融拡張の限界
Y r (%) 400410 IS LM (180) LM (220、線形) 金利の下限 E 下限での均衡 線形解(実現不可)

線形モデルは金利−0.6%、産出416を予測するが、金利の下限のため、実際の均衡は金利0、産出410にとどまる。

確認問題

μ\muが20から5に小さくなれば(LMが急になれば)、財政乗数と金融乗数は。分母μ+βλ\mu+\beta\lambdaは5+5=105+5=10である。dY/dG=5×5/10=2.5dY/dG=5\times 5/10=2.5、dY/d(M/P)=10/10=1dY/d(M/P)=10/10=1である。財政の効果は4から2.5に小さくなり、金融の効果は0.4から1に大きくなる。第7章の表と同じ結果である。

参考資料

  • John Hicks, “Mr. Keynes and the ‘Classics’,” Econometrica (1937)
  • Alpha Chiang and Kevin Wainwright, Fundamental Methods of Mathematical Economics, ch. 5, 8
  • N. Gregory Mankiw, Macroeconomics, ch. 12
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